しなやかな両腕には無駄なく筋肉が付き、たわわな乳房はツンと上を向いている。豊かな腰からは
美しい脚がすらりと存在を誇示している。ただ、その脚にも隙の無い筋肉が練りこまれていた。
赤くぽってりとした唇は真一文字に結ばれ、その水晶のような瞳は冷たい光の中に焔を孕んでいた。
静かでいて強い意志を感じさせる瞳だ。短く切った銀髪はため息を覚えるような美しさであったが、
決して雪のような儚い類のものではなく、例えるならばそう、刃物のような光沢を放っていた。
美しい女だった。と、同時に美しい剣士であった。胸部を覆う革鎧、腿まで伸びた旅行靴、
牙を思わせる刺繍の入った薄桃色の外套、そして、腰に刺した抜き身の大剣。そのいずれもが、
ただ美しいだけの女性には縁が無く、そぐわない。しかし、その女からはこの装備の説得力を
存分に感じ取ることが出来た。「この女は剣士だ。」と思い当たるのに時間は要らなかった。
そして私は今でも女の第一声を覚えている・・・。
「たのもー。」
武人だった。
どうしようもなく武人だった。
必ず一人で戦っていた。今日日の冒険者のように、数で圧倒するような真似は頑としてなかった。例え多勢に無勢でも一人で戦った。そして、
私の配下の不死者どもを蹴散らし聖杯を手に入れて見せたのだ。
私は聖王の滅後、初めての渇望に喉を鳴らした。
「この女の血が飲みたい・・!」